カナダの生命保険
Q&A 8 保険は、何のためにあるのでしょうか?「助け合いの精神」から生まれた生命保険
Q: 最近、英国のEU離脱、トランプ大統領選勝利と想定外のことがいっぱい起こり、この先どうなるのか不安です。
仕事もいつレイオフされるかとびくびくしています。どうしたら、安定した生活が送れるでしょうか。
A: なにげない日常生活の中で、私たちは「もしかしたら」という漠然とした不安をいだきながら生活しています。
安心して生活していくために、まず、経済的なリスクに対処するため「保険」で備えておくということは非常に大切です。「保険」を知るためにまず、生命保険の歴史を見てみましょう。
生命保険の始まりには様々な説がありますが、ルネサンス期のイタリアですでに存在していたとされており、もともとは奴隷を海上輸送するための保険としてあったようです。
しかし一方で、中世ヨーロッパの都市で組織された同業者組合である「ギルド」が始まりという説もあります。この「ギルド」では、仲間同士が仕事で困った時の資金援助や、けがや病気で働けなくなった時や、死亡時の遺族への生活援助などをしていました。さらに17世紀には、イギリスのセントポール寺院で、教会の牧師たちが組合を作り、自分たちに万が一のことがあった場合に、 遺族へ生活資金を出すために保険料を出し合う制度を始めました。このように生命保険は相互扶助の精神から生まれたのです。セントポール寺院で始まった制度は、皆が同じ金額を支払っていたために、組合員が亡くなったりして減ってしまうと、 約束した金額を支払うことができなくなり潰れてしまいました。その後、18世紀になると天文学者によって、実際の死亡率に基づいた生命表が作られ、この生命表によって合理的に保険料計算した「生命保険」が作られました。
人々の生活がしだいに変わっていく中で、病気や入院、けがなどの経済的なリスクに備えるために、イギリスで1762年にエクイタブル生命保険会社が初めて設立されました。当初は生命保険は資産家や牧師など特殊な人々のものでしたが、産業革命により都市生活者や給与所得者が急増すると一家の収入の稼ぎ手が亡くなった場合の生活保障や葬儀費用などが問題となり、19世紀半ばロンドンの労働者達が生命保険会社・プルーデンシャル ローン&保険組合(現イギリス・プルーデンシャル保険)に少額な保険料で葬儀費用を賄える保険を作ってほしいと申し入れ、プルーデンシャルはこれを受け入れて、少額・保険料建・週払の労働者向け保険を開発。これで、生命保険は一挙に庶民のものとなり、一時期、英国の全世帯の1/3がプルーデンシャルと契約していたとも言われています。当時の労働者にとってこうした問題がいかに深刻であったかを物語る事例といえます。また、当時のカナダは隣接するアメリカの南北戦争終結後の産業革命を受け、工場労働者(マニュファクチャラーズ)が急速に増えていた時期でした。そこで、カナダでは国策として生命保険会社を整備し、1887年に国会の議決により労働者向けの生命保険を扱うマニュファクチャラーズ・ライフ保険会社を設立。これが現在のマニュライフ生命保険です。カナダ初代首相ジョン・マクドナルドが19年間の首相を退任後、社会保障を補う目的で民間の生命保険会社の設立趣旨に賛同し同社の初代社長に就任。
今日、マニュライフは世界23か国で営業し、総資産は現在$935Billion。保険、投資、銀行の3つを持つカナダ最大の金融機関で、米国ではジョン・ハンコックの名で事業展開をしています。日本では1999年4月にマニュライフ・センチュリー生命として設立され、中堅生保の第百生命保険相互会社が2000年5月に経営破綻し、生命保険契約者保護機構から1,450億円の資金供与を受けて、既存契約の移転および営業権を譲受され2001年9月からマニュライフ、ジャパンとなりました。
日本においてはイギリスに遅れること約100年、1867年に福沢諭吉が欧米の近代的保険制度を「西洋旅案内」で初めて紹介したことが発端となり、1881年に日本で初めて明治生命保険会社が設立されました。
このように、中世ヨーロッパのギルドにルーツをもつ「生命保険」は、長い歴史の中で人々がより安心して暮らせるように進化し、人々の暮らしが変わっていく中で、万一の場合のリスクに備えるだけでなく、病気やけがでの入院のリスクに備えたり、老後のリスクに備えたりできる生命保険が考え出されました。
保険は、このようにとりもなおさず「助け合いの精神」から生まれたわけです。
それでは、私たちの生活の中でなぜ保険が必要なのでしょうか。
私たちの生活の中の3つのリスク
私たちの身のまわりには、大きく分類すると3つのリスクがあるといわれています。
「万一へのリスク」「けが・病気へのリスク」「老後へのリスク」です。
自分だけは ”そんなこと起こりっこない、大丈夫”だと思っていませんか?
しかし、意外と私たちはリスクと隣りあわせなんです。
統計によると、65才までに死亡する確率 5%、 けが、病気で働けなくなる確率29%、 重大疾病(がん、心臓発作、脳卒中等)になる確率24%、これらのどれかになる確率 45%
なんと、半分近くの人が上のどれかになるリスクがあります。それへの備えは十分できているでしょうか?
家族の働き手に何かあった場合、住宅ローンや家賃を払い続けられる?
子どもが卒業するまでの学費はどうする?
約$50,000これは、最低でも子供1人の教育にかかる費用です。
●けがや病気へのリスク
けがや病気で入院するとその費用だけではなく、収入も減ってしまいます。
●老後へのリスク
平均寿命が伸びるにしたがって、退職後の自由な時間も長くなり、退職金や貯金を取崩しながら、生活しなければなりません。さらに、ゆとりある老後を送るには、若い時から将来の老後への積立プランが必要となってきます。
近年では、生活水準の上昇に伴う支出の増加や、各種ローンの増大により家計における負債も増加しています。そんな中、もし急に一家の働き手が死亡したり、けがや病気で入院したらどうなるでしょうか。たちまち生活するお金にも困るかもしれません。死亡や災害、けが、病気は、いつ起こるか分かりません。また一方で、長生きした場合でも、いつまで貯金が続くかわかりません。このように、私たちは一生を通じて、常に何かしらのリスクにさらされています。
これらのリスクに対して、いざというときに経済的に困らないように、安心して生活していくために、前もって準備するために「保険」が必要です。
つまり、生命保険に加入することは、この「助け合いの精神」の仕組みに仲間入りし、安心して生活していくために、経済的なリスクに前もって「保険」で備えておくということなのです。
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